約 496,468 件
https://w.atwiki.jp/ekidash/pages/2469.html
うおずみ 西日本旅客鉄道 兵庫県明石市魚住町中尾 JR山陽本線(神戸線)(神戸~姫路) 大久保←→土山
https://w.atwiki.jp/kohakugawa/pages/4.html
熊野神社 片倉酒店 やたらとガタイのいい店主が営む酒店。 明石翔太が働いている。 ㈱Only Color本社
https://w.atwiki.jp/psychotoolbox/pages/105.html
誉めノート 別名 誉め行動記録表 用途 望ましい行動を増やす 誉める回数を増やす 誉めるトレーニングを動機づけマネジメントする 用例 誉めることが難しく感じるとき 誉める行動が見つからないと感じるとき ほめることがテレくさくて抵抗があるとき 使用法 (1)ノートに三列の表をつくる。 (2)それぞれの列に時間,望ましい行動、それをどう誉めたかを書く。 (3)1日1ページの記録をつける。 (4)次第にページを埋める個数(ほめた数)が増えていくのがわかる。自分のトレーニングの進展と、子供の望ましい行動の増加がわかってモチベーションを高め、誉める習慣が身につく。 解説 家族のうち、すべての大人が1冊づつ、このノートをつけるなら最高である。 互いのノートを見せあい、自分が見逃していた望ましい行動や、自分でも参考にしたいよい誉め方などの情報を交換できる。 もっともたくさん誉めていた人は賞賛に値する。みんなでその人を誉めてあげよう(このよい行動がさらに増えるだろう)。 参考文献 「読んで学べるADHDのペアレントトレーニング」(シンシア・ウィッタム、明石書店、¥1800;ISBN 4750315524) 邦訳名に偽りあり。ADHDの本ではない。むしろADHDをも含めたすべての子どもと親に役立つ、ペアレント・トレーニングの名著。記述がシンプルで、1章づつ試しながら、読み進めるのがよい。 参考文献 シンシア・ウィッタム『読んで学べるADHDのペアレントトレーニング』(明石書店) →邦訳名に偽りあり。ADHDの本ではない。むしろADHDをも含めたすべての子どもと親に役立つ、ペアレント・トレーニングの名著。記述がシンプルで、1章づつ試しながら、読み進めるのがよい。
https://w.atwiki.jp/himeji/pages/21.html
ジョイプラザ加古川稼働中ゲームリスト ビデオゲーム バーチャファイター5 鉄拳6 Dark Reseraction 以下、100円/2Play 鉄拳5 Dark Reseraction バーチャファイター4 Finaltuend MELTY BLOOD Actress Again 我狼伝説スペシャル 以下、100円/3Play パワースマッシュ3(対戦台) マーヴルスーパーヒーローズvsストリートファイター(シングル台) ファイナルファイト メタルスラッグ4 ストライカーズ1945Plus 音楽ゲーム ポップンミュージック15 アドベンチャー Dance Dance Revolution SuperNOVA2 beatmaniaⅡDX14 GOLD guitarfreaks V4 drummania V4 beatmania IIDX 18 Resort Anthem ガンシュー WARTRAN TROOPERS レース 湾岸ミッドナイトマキシマムチューン3DX 頭文字D ARCADE STAGE 5 カードゲーム 三国志大戦3 WAR BEGINS アイドルマスター 麻雀 麻雀格闘倶楽部6 MJ4 Evo その他 ガチャガチャンプ 駐車場有(無料)。住所:加古川市野口町坂本138 最寄は山陽本線加古川駅だが、かなり遠い。 バスでは、加古川駅より神姫バス坂元西口下車すぐ (系統は明石・甲南病院・西神・母里・上新田北口方面行き)。 以前は2Fもあったが、いつの間にか2Fは閉鎖となっている。 このため、かつてはメダルやプライズオンリーだった ボウリング場横の区画に1・2Fのゲーム類を集約で営業。 ボウリング場併設の力で、営業時間は10:00~26:00。 ただし、以前プライズ・メダルオンリーだった区画は24 00までの営業となる。 元々ボウリング場(セブンボウル)の跡であったことから、中のつくりは結構余裕がある。 ビデオ100円 加古川のゲーセン。情報をお待ちしています。補完お願いします。
https://w.atwiki.jp/japan_dorama/pages/5794.html
タイトル 放送局 日付 主演 hulu NETFLIX PrimeVideo dTV U-NEXT TVer Paravi Gyao カノッサの屈辱 フジ 1990.04.09 hulu NETFLIX PrimeVideo dTV U-NEXT TVer Paravi Gyao 痛快!明石家電視台 TBS 1990.04.16 明石家さんま hulu NETFLIX PrimeVideo dTV U-NEXT TVer Paravi Gyao
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2462.html
第十話 「やって来た小町娘」 キーンコーン、と規則正しいチャイムと共に、みんなが起立した。 「起立、礼」 「よし、じゃあ今日やった分はちゃんと復習しておくようにな」 数学の先生が教室を出て行った後、帰る準備を整えていると、 「おい水野。これからみんなでサッカーやるんだけどさ、一緒に来ないか?」 と、戸川君が声をかけて来た。 「あ、えと、今日はいいよ」 「えー、なんだよ、また塾か?」 「うん。ごめんね」 「まあいいや。次は来いよな」 そう残して戸川君が離れていく。戸川君はスポーツが得意で、気さくな性格もあって女子から人気だ。そして、バトロンもけっこう出来る。 せっかく誘ってくれるのに悪いなあ、と思いながら教室の出口まで歩いて行く。 すると。 「水野君」 後ろからだれかが呼んだ。 「あ、璃子ちゃん」 そこにいたのは、学級委員長の天貝璃子ちゃんだった。クラスのまとめ役ということもあってか、転校してきた僕にもよく話しかけてくれる。 「どうしたの? 部活は?」 「ううん、これから。水野君、もうクラスには慣れた?」 「あ、うん」 「良かった。でも水野君、勉強ばっかりしてない?」 「う……」 「ダメだよそんなの。たまには遊ばないと。前は戸川君達と武装神姫やってたじゃない」 「わ、分かってるけど、でも、最近塾が忙しいんだよ。じゃあ、僕もう行くからね」 一瞬目の端に映った、璃子ちゃんの心配そうな瞳から逃げるようにして、僕は下駄箱まで走っていった。 ※※※ 僕の通っている塾は駅前の踏切を渡った所にあって、そこへ行くには輝さん達のいる商店街をまっすぐ抜けなきゃならない。 商店街のアーケードを歩いている間ずっと、今日塾ですることと、さっきの学校でのことを考えていた。 転校してきてから三、四ヶ月くらい経つけど、璃子ちゃんの言うように最近あんまりクラスのみんなと遊んでいない。 また戸川君や他のみんなとバトロンで遊びたいとも思うけど、今日塾でやる連立方程式のテストも気になるし、早めに行って確認しておかなくちゃなあ、あと、クレアは家でどうしてるだろうなあ、なんて思っていたら、ふと通りかかったコンビニの前で誰かが話していた。 「ねえねえ、君可愛いね」 「俺ら暇なんだけどさ、ちょっと遊ばない?」 着物を着た女の人を、背の高い男の人が三人で取り囲んでいる。これって、ひょっとしてナンパ……? ちょっと怖かったから身を固くしながら通り過ぎようとしたけど、 「あの、明石食堂さんてお店はどうやったら行けますか?」 と女の人が言ったのを聞いて、思わず足を止めてしまった。今、確かに輝さんのお店のことを言ってたよね。 「は? 知らねー」 「はあ、困ったわぁ。早う行かんと、お土産駄目になってまうわ……」 「いいからそれよりもさ、俺らともっと面白い所行こうぜ」 「あ、そんなに引っ張らんと……」 男の人のうち一人が、女の人の手を引いて歩きだそうとする。 どうしよう。この人、輝さんの所に行きたいのかな、でも怖いし、塾もあるし……。 迷っている間にも、男の人達が女の人と行ってしまおうとする。どうしよう、どうしよう。 頭の中がぐるぐる回る。そして。 「あの!」 僕はぐっとこらえて、足を止めた。 「ん?」 「お、お姉ちゃんどこに行ってたの? 探したよ」 一瞬、男の人達も女の人もぽかんとした。うう、そんな目で見ないでよ。 「あ、輝さんの所に行きたいんでしょ?こっちだよ」 こっちだよ、と目でも訴える。こんな演技で大丈夫かな……。すると、 「……ああ、そうやったねえ。すっかり忘れとったわぁ。ほな、行きまひょ」 女の人は呆気にとられている男の人の手を振りほどいてこっちに来てくれた。 「あ、おい」 「寂しかったやろ? 堪忍な、置いてってしもて」 「あ、あの、こっちだよ」 そのまま僕と手をつないで、僕の案内する方に歩いてゆく。 「あ、えと……」 「うふふ、おおきに。格好良かったで」 少し歩いてから女の人がそう言ってくれたのが、なんだかとてもくすぐったかった。 「輝はんの所に行こう思たんやけど、迷ってもうてなぁ」 「輝さんの知り合いなんですか?」 「うん。君もそうなんやろ?」 「あ、はい。僕、水野健五です」 にこにこしている女の人と話をしながら、同時に塾はどうしようと思いながら、食堂に向かった。 ※※※ 「……どうだ」 「では、頂きます。はむっ」 出来上がったチャーハンを、雅はきちんと両手を合わせてから食べ始めた。 「……ダメね。味はともかくとして、おじいさまには全然及ばないわ」 「そうかい」 ややあってそう感想を述べた雅に、俺は顔をしかめた。 やっぱし、まだまだじじいの腕には届かないのか。 だが、俺の思考はそこで横にいた無粋な野郎に中断させられた。 「フーム、ならば次はワタシが何か作りまショウ。アキラ、鴨肉はありマスか?」 「ねーよんなもん! っつーか勝手に厨房に入ってくんじゃねー!」 この前の一件以来、どういうわけかアンリは度々食堂にやって来て、俺たちに絡んでくるようになった。 「冷たいデスね。ワタシとアナタの仲ではないデスか」 「うるせえ帰れ。今すぐにだ」 「まあいいじゃないか輝。せっかく来てくれたんだしね」 おやっさんはそう言うが、俺としては迷惑この上ないったらない。 「大体これは俺と雅の問題なんだよ。おめーは口を出すな」 しかし俺の話を聞かず、アンリは鍋とタマネギを引っ張り出している。 「聞けよ!」 するとその時。 「こんにちわぁ」 「こ、こんにちは」 戸を開けて入ってきたのは、健五と……。 「初菜?」 「オウ!」 俺が驚いている間に、初菜の容姿を見たアンリがどこからかバラの花を取り出した。 「アンシャンテ(初めまして)、お嬢さん。ワタクシ、アンリ・シャルダンと申しま……」 「輝はん!」 「ンなあっ!?」 しかし初菜はアンリには目もくれず、俺に抱きついてきた。横でショックを受けたように固まっているアンリに少し同情してしまう。 「久しぶりやねぇ、輝はん♪」 なおもぎゅっと抱きついてくる初菜だったが、 「あの、初菜さん? 再会を喜ばれるのは結構ですが、できればその、アキラさんから離れて頂けませんか?」 「ああ、いけへん。堪忍な、メリーちゃん」 掃除をしていたメリーが眉をぴくぴくさせているのに気付いて、やっと手を離した。 「やあ、初菜ちゃん」 「明石はん。お久しぶりです」 「初菜。久しぶりじゃない」 「メリーちゃんも雅ちゃんも元気そうやね」 「正月以来だな。てかお前、何で健五と一緒なんだ?」 「うふふ、助けてもらったんよ。おもろい子やなぁ」 「へ?」 何故か健五は顔を真っ赤にして俯いている。 「品川の方に用事があってなぁ、こっちにも寄ろう思ったんよ」 「そうか。……ところで、牡丹はどうしたんだ?」 俺がそう言った途端に、がたーんと音を立てて、天井からフブキタイプの神姫が降りてきた。 「……驚かせんなよ、牡丹。どこにいたんだ?」 牡丹は初菜の神姫なんだが、こいつは忍者型じゃなくて本物の忍者なんじゃないかと思う時がよくある。 「てかお前、ちゃんと初菜についててやれよ」 「……商店街の皆様にご挨拶しておりました故」 「いいっての。こいつただでさえ迷いやすいんだから」 「まあまあ。それより、ほら」 初菜が手に持っていた紙袋から取り出したのは。 「カステラ持ってきたから、お茶にでもしよか。な?」 ※※※ 「へえ、幼なじみなんですか?」 アンリさんや明石さん、それから神姫達も交えてカステラを食べながら話をする。今は、輝さんの思い出話だ。 「ああ。最初に会ったのは小三ぐらいだったな。そっから京都には高二くらいまで住んでて、その後こっちに引っ越してきたんだ」 「そうやったねえ。シイタケが食べられへんゆうて、善おじさんに怒られとったなぁ。懐かしいわぁ」 「う、うるせえ! 昔の話だろ」 輝さんは声を荒げたけど、みんな笑って流した。 雅は、目を輝かせてカステラをもぐもぐ食べている。手も付けずにじっと正座している、牡丹っていうフブキとはずいぶん対照的だ。 「ふふっ、美味し?」 「ん。初菜、大好き」 「ったく、調子のいいやつだ。ちょっと甘いもん出されると懐くんだからな」 「いいの。甘い物は特別なのっ」 普段は勝ち気そうな雅だけど、こうしていると女の子っぽいなあと思う。メリーも、ペットボトルの緑茶を飲みながら楽しそうに食べている。 「フム、オイシイデス。良ければマドモワゼル、今度ワタシとも……」 「黙れアンリ。そして帰れ」 「オウ! 非道いデス」 「そういえば、輝さんと三条さんってどうして会ったんですか?」 さっきの話の続きを聞いてみると、三条さんが笑った。 「初菜でええよ。ええとな、輝はんのおじいさんが、うちの旅館で料理を教えてくれとったんよ」 「え、輝さんのおじいさんですか?」 ふと、アンリさんが身を乗り出す。 「前に思いまシタが、もしかして、かのムッシュ島津ではありまセンか?」 「そうそう。島津善一朗って名前でねぇ、日本の料理界じゃ知らん人はおらんくらいの人だったんよ」 「知っていマス。ワタシも彼の本はいくつも読みマシたから」 「へえ、凄い人だったんですね!それで、今はどうしてるんですか?」 僕がそう言ったあと、輝さんの表情が変わった。 「死んだよ」 「え……」 「三年くらい前にな。ぽっくり逝っちまった」 「ちょっと、輝はん。そないな言い方あらへんやろ?」 「事実だろ」 「輝はん!」 「わりい。俺、部屋戻るわ」 そう言って、輝さんはお店の奥へと行ってしまう。 「……うち、ちょっとお話してきます」 「あ、あの、その……ごめんなさい。僕……」 「ううん、気にせんといて。輝はん、たまにああなるんよ。ほな、後でね」 続いて、初菜さんも奥へ下がってしまった。残された僕らは、しんと静まる。 「あの……」 すると、いつになく真剣な目をしたアンリさんが、 「何があったのデスか?ムッシュ明石」 しばらくして、ぽつりと明石さんが言った。 「……そうだね。君たちももう輝の仲間だ。だから……そろそろ話しておいてもいいかもしれないな」 「京介さん……」 「いや雅、いいんだ。彼らなら、きっと支えになってくれる」 「話して頂けマスか」 「うん。じゃあ……どこから話そうかな。そうだね、前に健五君に僕と輝の関係を聞かれたけど」 「あ、はい」 明石さんの優しそうな瞳が、悲しげに揺らいだのが見えた。 「輝のおじいさんはね、僕の……師匠だったんだ」 ※※※ 部屋の窓から、落ちかかった夕日を眺めていると、昔の事を思い出した。 『いいか輝。なんにでもな、そいつにしか無い味がある。それを見極めてやるのが……』 じじいよ。俺はまだ……。 「あ、ここにおったんね」 「ん」 畳に寝転がったまま、入ってきた初菜の顔を見上げる。 初菜は俺の隣にやって来ると、正座をして窓の外を眺め始めた。 「輝はん、気持ちは分かるけど、少し落ち着いて、な?」 「……分かってるさ。俺ももうガキじゃねえ」 でも、本当はまるで分かってないのかもしれない。 体を起こしてあぐらをかく。 「そういえば、腕はもう大丈夫なん?」 「もう昔の事だ。心配すんな」 だが、少し右肩がちくりと痛む。 初菜はまた窓の外を見る。少し沈黙が降りる。 「うちもなあ……時々、あの頃が懐かしくなることがあるんよ……」 突然、初菜がつぶやいた。 「輝はんとうちと、善おじさんとでお料理して……輝はんとうちが作った厚焼き卵が焦げて、善おじさんが笑いながら教えてくれたなあ」 俺が見た初菜の表情は沈んでいた。 「主にお前にべったりくっついてたけどな、あのじじいは」 「もう。また言ってる」 初菜は一瞬笑顔を見せたが、またさっきの沈んだ顔に戻った。 「……いつからやろな。おじさんの事そう呼ぶようになったんは……」 「……」 「ほんまは寂しいんと違うの? おじさんと……それから、お父さんも」 「言うなっ!あのクソ野郎の事は……!」 叫んでから、興奮してしまった自分に気付く。 「あ、ごめん……」 初菜がそう謝ったのを見て、ようやく自分を抑えられた。 「……悪い。怒鳴っちまった」 「ううん。うちが悪いんよ。輝はんの気持ちも考えんと……。これじゃ跡継ぎ失格やわ」 そんな事は無い。悪いのはいつだって俺だ。過去の事をいつまで経っても受け入れられない、ガキみたいな俺だ。 「でも、輝はん。これだけは覚えといて。お父さんがおらんかったら、雅ちゃんも、今の輝はんもおらんのよ」 「……そうだな」言葉ではそう言っても、心では納得出来ない。 けど、こいつは俺よりも、ずっと大人だ。 「ありがとうな。心配してくれて」 「……うん」 俺が謝ってやっと微笑んだ初菜は、目を閉じて頭をこてんと俺の肩にのせてきた。 「暖かいわあ」 「止せよ、恥ずかしい。下に戻るぞ」 「……うん。でも、しばらく……こうさせて」 「ったく……」 ※※※ 「師匠、ですか?」 明石さんの言葉を僕も繰り返す。 輝さんのおじいさんが明石さんの師匠……。ここまでの関係は分かった。でも、そうするともう一つの疑問が生まれる。 「じゃあ、輝さんはどうして……明石さんと暮らしているんですか?」 そう聞いてから、明石さんの表情がまた曇ったのが分かった。あ、僕はまた、聞いてはいけない事を聞いたのか。 でも、明石さんは僕の疑問に答えてくれた。 「さっきも聞いたと思うけど、そう、確かに輝のおじいさんは三年半前に亡くなった。でもね……その時、輝には血のつながった家族が一人もいなかったんだ」 「え……」 それって。 「輝のお父さんはね、師匠が亡くなる前に……ある日突然師匠達を残して、いなくなってしまったんだ」 聞いてから、僕は体中に冷たいものを流された気分だった。 輝さんには、家族がいない。 「そんな……」ひどい。ひどすぎるよ。 でも、明石さんの言葉は続く。過去を懐かしむように。 「輝のお父さんは師匠とは違って、料理の道へは進まずに、技術者の道を選んだ。だから師匠は自分の持てる技を、輝と、それから雅に教えたんだ」 明石さんは遠い目をしている。でも、ここでまた新たな疑問が生まれた。 「あれ?でも……たしか三年前って、こひるはまだ発売されてないんじゃ」 こひるとメリエンダが発売されたのは、2040年の初めぐらいだから、去年の事になる。 「そこから先は、あたしが話すわ」 後を継いだのは雅だった。下を向いたまま、辛そうに話し出す。 「あたしは、プロトタイプなの。戌轡人造舎でデータ収集のために作られて、博士に……アキラのお父さんに引き取られたのよ」 また、知らなかった事が分かった。 「……メリーは? プロトタイプじゃないの?」 「私はただの市販品です。だから……アキラさんのおじいさまの事も、昔の事も良く知らないんです」 「そうなの……」 「雅」 その時だった。 「っつ!」 今までじっと話を聞いているだけだった牡丹が、いきなり苦無を取り出して凄いスピードで、それこそメリーよりもずっと速いくらいの速さで雅に斬りかかったんだ。 雅はすぐに腰から爪楊枝型の短剣を引き抜いて受け止めたけど、そうしたらすぐに牡丹は苦無を納めた。 みんなに緊張が走る。 「何よ!」 「……腕はなまっていませんね」 牡丹の無表情な目に、僅かに残念そうな色が浮かんだ。 「むしろ上がっていると言って良い。ですが今、貴女は本当に幸せですか?」 「……何が言いたいの?」 「輝様のもとに居て、貴女は本当に幸せかと聞いているのです。あの方はまだまだ未熟ですから」 「そんな!アキラさんは」 「メリー、部外者は黙りなさい。……それに雅、あの方がかつて貴女にした事、忘れたわけではないでしょう?」 牡丹の問いに、雅は剣を腰に納めると、 「はっ。前にも言ったでしょ。あんな昔の事なんかとっくに水に流したつもりだし、それにあたしの幸せはね、おじいさまとの約束を守る事なんだから」 牡丹はそれを聞いて、目を閉じてゆっくり背を向けた。 「……良いでしょう。貴女の決意は変わっていないようですね。ならば私は見届けさせて頂くとします。……努々お忘れ無きよう、神姫は主を導く刃で有る事を」 牡丹は元の位置に戻ると、また正座した。 「話の腰を折ってしまい申し訳ありません。どうぞ続きを」 どうぞと言われてもなあ、と僕が思っていると、また明石さんが口を開いた。 「とにかく、輝は今も苦しんでいる。明るく振る舞っているように見えるかもしれないけど、どうしようも無い寂しさを抱えているんだ」 明石さんはテーブルに両手をつくと、僕らに頭を下げた。 「どうか、君たちも輝の仲間として、一緒に傍で支えていってはくれないか」 「当然デス。彼はワタシのトモ。ならば力になりタイ」 アンリさんは迷う事無くそう答えた。 「ぼ、僕は……」 僕も、何か答えようとしたのだけど。 「健五、アンリ。すまねえが、今日は帰ってくれ」 丁度初菜さんと一緒に降りてきた輝さんがそう言った。 「輝さん」 「悪いな、さっきは。けど今日はもうこの辺にしといてくれ。頼む」 明石さんの話を聞いたからかもしれないけど、この時の輝さんは何故だか、とても辛そうに見えた。 「アキラ……」 アンリさんもそれを感じ取ったのだろうか。 「輝はん、うちももう帰るわ。ほな、体に気ぃつけてな」 「ああ。またな」 初菜さんは牡丹と帰ろうとする。続いて、アンリさんが立ち上がった。 「アキラ」 「ん?」 「忘れないでくだサイ。ワタシはアナタのトモだという事を」 輝さんは一瞬呆けた表情になったけど、ふっと笑った。 「ま、覚えとくさ」 アンリさんが一足早くお店から出て行く。僕は……。 「どうした、健五」 「あ、あの」 何か言おうとしたけど、そこで、 「……ああっ! 僕、数学のテストがあるんだった」 すっかり忘れていた。今から行ったら、確認の時間は10分くらいしかとれない。 「何だよ。ならとっとと行け。ついでに駅まで初菜と行ってやってくれよな」 「うん」 やっぱり輝さんに何か言いたかったけど、思い浮かばなくてこんな事を言ってしまった。 「あの、輝さん。その……頑張って」 「へ?」 ああもう、何を言ってるんだ僕は。 ※※※ 「それじゃあね」 「はい。ありがとうございました」 駅の改札の傍で、初菜さんと別れる。 「ねえ、健五君」 初菜さんは別れ際にこう言った。 「輝はんの事、頼むね」 「え……」 「うちはいつでも来られるわけじゃあらへんから、いつも近くにいてくれる健五君なら、輝はんを支えてあげられるんとちがうかな、って」 「は、はい」 「ふふ。よろしゅうな」 初菜さんはそう言って、改札を通っていった。 「ええと、東京駅はこっちやね」 「……主、そちらは男子トイレです」 「ええっ!? いややもう、恥ずかしい」 大丈夫かなあ。 ※※※ その後、塾に行ってテストと授業を受けたけど、食堂で聞いた話が気になって、ちっとも集中できなかった。 午後九時ぐらいになってから、重たい気分でマンションのエレベーターを登る。 六階の六〇七号室のドアを開けると、母さんが待っていた。 「あら健五ちゃん、お帰りなさい」 「……ただいま」 「テストは?見せなさい」 「あ、はい」 母さんに言われるままに答案用紙を渡す。 「駄目じゃないの!?ケアレスミスばっかりよ」 「ご、ごめんなさい……」 「どうした? おお、お帰り健五」 父さんがリビングから顔を出した。 「ちょっと聞いて下さいあなた。健五ったらこんな点数とって」 「ん?……まあいいじゃないか。学校ではよくやってるみたいだし」 「学校だけじゃ足りません! あなたも何とか言ってくださいな」 言い合いを始めた母さんと父さんの隣を抜けて、部屋へと向かおうとして、母さんがこう言ったのが聞こえた。 「やっぱり神姫なんて買ったのがいけなかったのよ」 「!」 違う。クレアは悪くない。 母さんの言葉があんまり苦しくて、僕は廊下を走り抜けて部屋まで行った。 「はあ、はあ」 ドアを閉めても、まだ心臓が早鐘のように鳴っている。カバンを下ろしてベッドに座ると、自然に涙が出てきた。 「ううっ……うう」 「お帰りなさい、マスター。……? どうしたんですか?」 電気スタンドがついた、机の上のクレイドルからクレアが降りてきて、こっちにやって来た。 「泣いて、いるんですか?」 「クレア……」 心配そうに僕の顔を覗き込んでくるクレア。僕が家にいない間に、母さんに何かひどい事を言われていないだろうか。そう考えると、余計に涙が止まらなくなってしまう。 「マスター」 するとクレアは、笑って僕の膝を叩いた。 「落ち込んだ時は、歌を歌って気分転換するのが良いって聞きました。だから、マスターも一緒にやってみましょう! せーの、負けないよ、乗り越えるわー♪テラ根性♪」 元気に歌い出したクレアは、そのまま机の傍まで行って国語の教科書を持ってくる。 「……ねえ、クレア」 「努力と根性……、はい?何ですか?」 「実はね……」 今日食堂であった事を話す。するとクレアはきょとんとした。 「何だか、大変なお話ですけど」 「僕、本当に輝さんの力になれるのかな」 自分の言いたい事も言えないでいる僕が、輝さんを支える事なんて本当に出来るのかな。 そう思っていると、クレアは不思議そうにこう言った。 「マスターは、輝さんが好きじゃないんですか?」 「え?」 「あたしは、大事な人のためならどんな事だって頑張れると思うんです。だからマスターも、輝さんを大切に思うなら支えられるんじゃないかなって」 「クレア……」 クレアはまた太陽みたいに笑って、 「そうだマスター、今日はこれを読んだんですよ。それで、お話したい事があって」 と、さっきの教科書を差し出した。 その姿を見ていると、僕も少し楽になる。 「……うん。どこを読んだの?」 「えっと、このページです。どうして喜助はこんな非道い事をしたんですか? 弟さんが可哀想です」 「うーん、先生が言ってたのは……」 今はまだ、輝さんを支えられるくらい強くないけど。 せめて、この小さな友達を守れるようになりたいと、僕は思った。 ~次回予告~ 街の人々が語る幽霊の噂。 真相解明に乗り出した健五と璃子が見たものとは!? 「怖いの?」「ち、違うよ!」 次回、第十一話 思い出のおせんべい お楽しみに! 武装食堂へ戻る
https://w.atwiki.jp/srkjmiroor/pages/1543.html
「宇宙最強のこの私がーー!」 【名前】 パチャカマック12世 【読み方】 ぱちゃかまっく12せい 【声】 増谷康紀 【登場作品】 獣拳戦隊ゲキレンジャーVSボウウケンジャー 【分類】 宇宙拳法 【デザインモチーフ】 バリドリーン 【モチーフ】 パチャカマック 【関連物】 赤い宝玉と青い宝玉(力の源) 【詳細】 宇宙拳法の使い手として名を馳せる、パチャカマック一族の12代目。激気とも臨気とも幻気とも異なる、緑色のオーラで表現される独自の気を持つ。 「初代パチャカマック」は人格者であったようだが、自身は「自分自身が楽しめることが唯一正しい」という傲慢で危険な思想の持ち主。 凶悪さゆえに惑星イスラという場所に封印されていたが、TV本編最終話で宇宙に旅立った明石暁と西堀さくらが封印を解いてしまい、西堀さくらに憑依して人質として明石暁を脅迫、協力者にした上で、初代パチャカマックが地球に封印した「宇宙拳法究極の力」を手に入れるべく地球にやってくる。 まずはスクラッチで保管されていた赤い宝玉をボウケンジャー、ゲキレンジャー、風のシズカによる争奪戦に乗じて明石暁に奪わせ、更に青い宝玉が保管されている「臨獣殿」にダイボイジャーで乗り込み、「宇宙拳法究極の力」に興味を示した「理央(黒獅子リオ)」を仲間に引き入れる。 南米の神殿で封印を解く事に成功し、「理央」、「メレ」、「獣人バーカー」に「宇宙拳法究極の力」を分け与えて強化すると同時に心を奪って下僕にしてしまう(極めて鈍いバーカーのみ洗脳も意味がなかった模様。)。 自らの力を見せ付けるために街中で暴れまわっているところでボウケンジャー、ゲキレンジャーが駆け付け、ゲキレッド、ボウケンレッドと交戦、「宇宙拳法究極の力」で得た両肩から腕が生えた四本腕形態、宇宙拳秘技「彗星激突」などの圧倒的な破壊力を持つ技で苦しめる。 冒険スピリッツを理解したゲキレッドとワキワキを理解したボウケンレッドによって宇宙拳奥義「惑星直列波」を破られてしまい、「レッドゾーンタイガー撃」で吹っ飛ばされ、バーカーと共に2大戦隊の「轟轟ゲキゲキシュート」により敗北、生き延びるしぶとさをみせつける。 その後、巨大化し月から地球を丸ごと破壊しようとし、追いかけてきた2大戦隊のアルティメットダイボウケン、ゲキトージャウルフ、ゲキファイヤーの3体を追い込む程に極めて高い戦闘力を発揮。 理央とメレが操られていた礼をするのにリンライオンやリンカメレオンで現れ、ゴウの呼びかけに応じてリンライオンとリンカメレオンがゲキトージャウルフと合体、ゲキリントージャウルフとなってからは形勢が逆転、激臨剣によって両肩の腕をあっさり斬り落とされた上にアルティメットダイボウケン、ゲキファイヤーと共に追い詰められ、最期は「大聖剣斬り」、「激臨狼狼斬」、「頑頑ナックル落とし」を連続で受け爆散した(上記の台詞はその際のもの。)。 『海賊戦隊ゴーカイジャー』では後継者の「行動隊長パチャカマック13世」が登場している。 【余談】 モチーフは『秘密戦隊ゴレンジャー』のバリドリーン。 「パチャカマック」という名前の由来は、アステカ神話における創造神の名前から。
https://w.atwiki.jp/duelrowa/pages/331.html
遊星と別れ、草木が程よく雪を被った段丘を歩く蛇王院と明石。 船も港もあれば海だと考えるのは自然だが北上してみれば雪原があり、 地図と照らし合わせると海だと思ってた場所は実は湖だったオチが待っていた。 深夜帯と言うのもあって、まさか気付かないで会話してたとは思いもしなかったが。 「船があると思ってたがバリバリの陸地だったな。」 「……みたいですね。」 北上する深夜帯の段丘は段差の都合、 死角と言うものも多くなりがちで警戒は当然だ。 と言うより、下の方や上の方にいくらか隠れていることはわかっている。 元より経験豊富な二人には気づくことは難しいことではなかった。 「いるのに襲ってきませんね。」 「邪魔してこねえならいいさ。」 蛇王院の気迫が原因だろうか。 放送を聞いたり名簿を見てからと言う者、気を張っている。 下手に近づこうものなら怪我じゃすまないと警告するように。 だから近づかない。余裕があれば襲おうと言う腹積もりではあるようだが、 そんなこすい手が通用するような相手ではないことは明石にもわかる。 「そ、それにしても一見普通の人のようですが、 とんでもないのを敵にしちゃってるんですね……私達。」 気まずい空気に負けて先を歩く彼へ声をかける。 彼女の身近な場所には高速建造とか加速することはあれど、 ポーズ、もとい時を止めるなど艦娘の世界には存在しない。 なので『いつの間にか襲撃した人がやられていた』と言う、 大多数の人物と同じような反応をすることになる。 「神がこんな俗物的な遊びするかよ。 力におぼれた人間なんぞいくらでもいたしな。」 B能力を得た特体生による世紀末な世界。 スカルサーペントは多くの学生が集っていた。 キュウシュウだけではなくPGGと言った遠方の地からも、 戦いに疲れてしまった、特体生に被害を受けた難民は多く存在する。 なので別段珍しくはない。あそこまで調子よくのたまう奴は初めて見たが。 「ふむふむ……もしかして、そういった人が参加してるんですか?」 「あ? なんでそんなことを聞く。」 「さっきから物凄く気を張ってるので。正直、怖いです。」 「ん、そうか。だったら悪かった。 俺の名簿のところ見ておきゃわかる。悲報だぜ?」 蛇王院で悲報と言わしめる相手。 どういうことかと思うとタブレットを投げ渡された。 彼の名前のすぐ隣に座するのはホーリーフレイムの番長、ジャンヌの名前。 遊星との情報の齟齬を確認するため簡単な情報交換をしたことで名前は知っている。 遊星の名前の近くには知り合いとなる人物としてジャックがいたことを考えると、 関係者でない可能性の方が低いことは察せられた。 「あいつなら『神を冒涜したな!』とか言って、殺し合いには反抗するだろうな。 つっても、その過程でアイツが毛嫌いする日本人はこの場で皆殺しにされちまうが。」 日本人に迫害され続けてきた憎悪は、 例えどんな状況であっても変えようとはしない。 世界を揺るがす状況であろうとも、そこに関係はなく。 有益、同胞。そう言ったものであろうとも一切関係なし。 異端と認識した相手は一切の躊躇なく殺せる冷血な聖女。 虐殺を聖戦と称してる気を違えた奴だから始末に負えない。 少なくとも、彼からすればそう言った認識しか持てなかった。 スカルサーペントから寝返った奴ですら始末しているのだから。 「あの女は絶対曲げない。抱く価値はねえが、 同時にあいつは強いのは認めざるを得ない。」 忘れてなどいない。 ホーリーフレイムに決戦を挑んだときのことを。 奇襲を読まれ、多くの船が燃やされたあの絶望的状況を。 ジャンヌに勝てたのも、その最中に神威から学聖ボタンを貰ったからできただけ。 ボタンで変質した腕の触手はそのままではあるとしても、 ボタンなしでは以前ほどの強さは発揮できないだろう。 「蛇王院さんでも難敵ですか……かなりまずくないですか?」 ジャンヌがそのような強さを持っているということは、 他の参加者もそれぐらいの高水準な参加者の可能性は高い。 デュエルが軸となる遊星は確実にこの戦いで強い人物になると考えれば、 艦娘の自分がヒエラルキーに於いて一番下なのではないかと思えてきた。 「だが諦めるってことはしねえ。テメエもそうだろう?」 隣で不敵な笑みを浮かべる姿は、 同じ海に生きる存在ではあり一応は無法者だが、 外見も相まって頼もしさすら感じられる。 「勿論ですよ! 私だって───」 「そうだな。あの神を冒涜する日本人も私の裁くべき相手だ。」 明石の言葉を遮るような、澄んだ声が聞こえた。 別に先程の発言は明石に対して言ったものではない。 だから彼はその言葉を正面を向いたまま返したのだ。 前方十メートルほど先。上の丘から見下ろす女性が一人。 物語に出てきそうな女騎士の恰好は、朝日が昇る最中ならば絵画だろうか。 煌めく聖剣を手にしている光景は、それはもう救世主と呼ぶに相応しき姿だ。 だが今は違う。この人だ、間違いない。初対面の明石ですら察せられる。 これはやばい。相手をするなら死力を尽くして戦うべき相手なのだと。 「名前を見てまさかと思ったが……貴様、何故生きてる?」 「ハッ、こっちの台詞を言うんじゃねえよ亡霊が。」 互いにその首を取った相手のはず。 互いに疑問を抱くが、直ぐにそれは飲み込んだ。 『冥界の神を名乗る輩もいるのであれば、死者の蘇生もできるのだろう』と。 互いに別々のルートから招かれたことは、少なくともこの場で解決はしない。 否。解決する必要がない。解決させたところで何一つ意味はないのだから。 「どちらでも構わんか。もう一度斬ればいい。」 「だろうな。」 「だがその前に、そこの少女。日本人か?」 視線を向けられ、軽く後ずさりする。 美人と呼べる端麗な姿は見惚れてもいいはずが、 冷たい殺気に身体が無意識に逃げを選ぼうとしていた。 「こいつは艦娘っつー、まあ精霊みてえなもんだから日本人の定義にはならねえよ。」 「アバウトすぎます!」 ざっくりしすぎた解説に思わず状況を考えずに突っ込む。 精霊は精霊で別にいるような気はしてるので、艦娘は違う。 まあでも艦娘とはなんぞ、と尋ねられても彼女自身も答えられない。 人間かどうかと言われると怪しいし、日本人かどうかと言われても怪しい。 「日本人でないのであれば特別に問おう。 私と共に日本人と言う汚れた血を浄化するか、 それともそこの男と共にこの場で散るか、選ぶといい。」 二択と言う名の一択だ。 蛇王院を裏切って味方しろ、しないなら死ね。 余りに無茶苦茶な要求に思わず唖然としてしまう。 「ほら、こういう奴だ。お前の守る日本も、こいつが行ったら日本人は皆殺しだ。」 二人とは別の日本だから関係はないのだろう。 彼女としては提督の下へ帰る、それだけの話だ。 言い換えれば、それがどちらの下であっても余り変わらない。 寧ろ実力だけで言えばジャンヌの方が上かもしれないこともある。 また、大淀や提督と言った人物がいないので日本人が皆殺しでも、 自分が住んでいる日本人と言う名の犠牲者は少ないだろうとも。 「……そっちも譲れないものがあるのは分かるし、 納得できないのも十分にわかることだと思う。でも、 私にとっては別の世界であっても護国を守る艦娘だから。 その日本人を守るって言うのも、此処で私のするべきことなんで!」 日本を守るため日本人を皆殺しを許せと。 別世界の日本人であろうともそんなの許せるか。 と言うより、許した上で元の世界へ戻れるわけがないだろう。 日本人見殺しにした艦娘が日本を守るなど、ちゃんちゃらおかしな話だ。 ヘヴィプレッシャーを構えると言う少々シュールな光景ではあるが、 明石の眼差しは蛇王院にも負けず劣らずの決意がこもっている。 「そうか、ならば此処で死ぬがいい。」 飛び降りて着地と同時。 距離があったはずの三者の距離はすぐに詰められた。 聖剣の横薙ぎの一撃は明石の首根っこを掴みながら後退することでダメージはない。 回避こそすれども暴風を起こす攻撃は直撃を許してはならないと警鐘を鳴らす。 喰らえば一瞬にして大破を通り越して、轟沈待ったなしの一撃に汗が噴き出す。 「ッ、間合いに入らない方がよさそうだな!」 蛇王院の腕から触手が数本伸ばされる。 学聖ボタンで変質したのは腕だけではない。 人を絡め取るには容易の触手だって飛ばせる。 弾丸の如き動きと彼女にとって知らない機敏な一撃。 不意打ちには十分すぎるほどに足りえるも、彼女が腕を振るえば風圧と共に容易く切断される。 (あいつ、持ってる剣もだが前と違うみてーだ。) 知らない力を得ているのは何も彼だけではない。 騎士王の聖剣を賢者の石の魔力によるバックアップを持ち、 更に三つ目の支給品となる、領将(スルド)の証となる風の主霊石(マスターコア)は、 この地に存在する水の主霊石同様に力を与え、風の力を獲得していた。 元より特体生と言うのは異能とは密接な世界に生きてきた身だ。 賢者の石で魔力を操ることも、番長を務めた実力から難しいことではない。 得物も上等、別途の力もそうとう優秀なのだろう。 これは自分を打ち負かした斬真狼牙を凌駕しうる。 「この腕がなかったら、まあ一方的だっただろうな。」 「日本人で異形の力とは、どこまでも冒涜の道を行くか。」 自軍の聖歌隊であろうとも異形の翼が生えれば異端とする。 であれば、日本人でそのようなのであれば当然侮蔑するほかなし。 「誰のせいだ、誰の!!」 そもてめえが切り落とした右腕のせいでこうなったんだろうが。 とか思いながら砲撃のような音を出す踏み込みと共に肉薄。 異形の右腕と言うが、見た目は海賊をイメージするとなれば、 もっぱら出てくるであろうフックそのままの形になっている。 首を刈り取る一撃は豪風と共に行われるがバックステップで難なく避けられる。 後退した瞬間返しに横薙ぎの斬撃を即座に後方へとジャンプで此方も無傷。 着地を狙おうとジャンヌが走り出すも、 「いっけえええええ!!」 少しばかり横へと移動していたた明石が握るマイク、 帝具ヘヴィプレッシャーに声を注ぐことで放たれる超音波。 力いっぱい叫んだ彼女の正面へと放たれる衝撃波が襲う。 常人が直撃すればこの音波一つでも全身の骨が砕ける程の一撃。 さしものジャンヌでも剣では防御できるものではないため回避を優先。 横へ転がり着地の隙を埋めておく。 「脳を直接シェイクしてくるたぁ、随分やべえじゃねえか!」 基本的な攻撃範囲は直線状ではあるが、超音波であることには変わりはない。 敵味方問わず飛んできた音には、彼とて片方の耳を塞ぐことになる。 なお、周囲にいたNPCもこの音を聞いたことで逃げを選んでいたが、 最早彼らにとってはさして関係のない話ではあった。 「戦闘はあまり得意じゃないんだけど……!」 艤装はなし、しかも陸上での戦いと圧倒的なまでに不利だ。 帝具との相性は瞳を輝かせたからか悪いわけではないと言えども、 消費エネルギーも多いから要所要所で決めていかなければならない。 「……優先順位はそちらか。」 防御不可の攻撃の方が厄介だ。 当然其方を潰していくのはセオリーで、 明石に狙いを付けてと走り出すが、 「させるかよぉ!!」 右手のフックがパカリと開いて地上へと砲撃を放つ。 これも学聖ボタンを得た際に変質した腕による恩恵であり、威力も相応に高い。 並の戦車の比じゃない一撃であるためジャンヌは距離を取ることを最優先。 同時に距離のあったはずの明石は威力の強さに軽く吹き飛ばされる。 「大丈夫か!」 「大丈夫です! 軽く打っただけなので!」 「無理して救援できねえ範囲に行くなよ!」 「それはそうと、蛇王院さん! これ良かったら使ってください!」 明石はデイバックから日本刀を手にしてそれを投げ渡す。 腕を切り落とされる前からも剣自体は何度も使ってはいたが、 太刀と呼べる程々の長さの業物は、蛇王院としては初めて握るものだ。 「おう、悪いな!」 左手に日本刀を握り締め蛇王院が突進する。 剣とは形状は違うので勝手は大分変わるものだが、 そも番長ともなれば単純に振るうだけで暴力的な強さを持つ。 避けた先へ木を揺らすを通り越して細い木が耐え切れず圧し折れる。 雪に直撃すれば積もっていたはずの雪が吹き飛んでいく風圧。 折れた木の悲鳴など戦いの場に於いて聞くもの非ず。 避けたジャンヌが両手でエクスカリバーを構え縦に斬撃を振るう。 横へ転がることで難なく回避するも、先程彼がいた場所を斬撃で地面が抉られていく。 転がりながらすかさず切り上げたところ互いに相殺して、その衝撃で周囲を軽く揺らす。 互いの実力は拮抗───否、ジャンヌが割と優勢で地面を削りながら後退させられていた。 確かに蛇王院が持っていたそれはその世界で折れず錆びないとされる性能を誇る代物でも、 相手は英霊が持っていた神造兵装とされる代物。西洋剣と日本刀では重さも違う。 (スティグマっつーのを装備してもやっぱ埋められねえか!) 事前に目には見えないが装備品を装備しており、 ある程度肉体に対して強化はしてこそはいるものの、 やはり基本的には格上の相手であることに変わりはなかった。 (だったらどうだってんだよぉ!!) 持ってる物の長さや太さで決まるようならば、 最初から勝負は決まっている。どのようにして補うか、 スカルサーペントは常にそのような選択に迫られ続けた。 海賊の無法者だからと支援されずうまいことやりくりをしながら、 多くの難民を迎え入れていたのだから、その手の事は長けている。 (まあその辺については部下の美汐に任せてたりはしていたのだが。) すぐに肉薄して両腕の得物を以って、斬撃の猛襲を繰り返す。 (以前戦った時よりも素早いな。) 冷静な顔で一撃一撃を丁寧に防ぎながら、 合間を縫っては聖剣の斬撃を狙うも感づいて回避される。 どれだけ優れた番長であってもこれほどまでの実力者は基本稀だ。 ナイトメアアイズのカミラでも、PGGの銀城でもこうはいかない。 (いやいや!? これって本当人間の戦いなの!?) 明石は二人の戦いに驚きが隠せない。 援護しようにも蛇王院が近すぎては満足にできず、 程よく距離が開いた瞬間の隙を埋めるための支援しかできない。 と言うより、この二人の戦いは艦娘の観点から見ても次元が違う。 艦娘だって十分な艤装がなければできないレベルの戦いを、 二人は武器やら特異体質はあれどそれ以上に起こしている。 艦娘ではないので分からないが、もし二人が艦娘だったら、 並の深海棲艦なら生身でも勝ててしまうのではないかと思える程に。 剣が、刀が、砲撃が、風が、触手が、斬撃が。 どの攻撃であろうとも常識を超えた一撃となる。 地面が、草木が、雪が、岩が次々と飛んでは地形が変化していく。 このまま続いてしまえば段丘が丘や平地になってしまいかねないような。 仕方がないと言えば、その通りだ。 特体生が持つB能力とはそれほどまでに常軌を逸している。 誰が言ったか『戦車ってただ装甲が硬いだけの車じゃねえか』と言ってのけた。 事実それを言った男は、戦車を相手に生身で立ち回って勝利してたりもしており、 二人はその男に負けず劣らずの実力を有していたのだから、これぐらいは当然だ。 流石にそんな戦闘能力、一個人が持つ能力としてはかなり規格外ともあって、 ポセイドンなどの最上位程ではないにしても相応の制限はされている。 だがそれでも、陸上の艦娘の入る余地など此処にはありはしない。 これがスカルサーペント番長、蛇王院空也。 これがホーリーフレイム番長、ジャンヌ。 キュウシュウの勢力で長らく争い続けてきた者達。 どちらかが生きた道に於いても日本を統一することとなる、 狼牙軍団が立ち向かった最後の組織のリーダーとなる力だ。 しかしこの戦いも長くは続かず拮抗は崩れる。 ジャンヌの一閃が蛇王院の胸に真一文字を刻む。 いかに彼と言えども軽傷と呼ぶには無理のある痛手の一撃を。 元々組織としても、番長としての実力もホーリーフレイムの方が上だ。 そも、神威の介入がなければスカルサーペントには勝ち目のなかった戦いなのだから、 御刀にスティグマがあろうとも、神造兵装と賢者の石の前ではどうしても見劣りしてしまう。 スティグマの強固な防御強化と回避強化により、致命傷を免れただけましだ。 「蛇王院さんッ!!」 そこから明石が下した判断からの行動はとても早い。 超音波を前に回避を優先とするジャンヌだが、今度は別だった。 「奥の手いっけぇ!!」 前方ではなく周囲へ轟く超音波について、防御は間に合わなかった。 ヘヴィプレッシャーの奥の手『ナスティボイス』は範囲は通常以上に無差別なもの。 しかもこの音波をまともに浴びれば、暫くまともな動きができなくなるほどだ。 「グッ……」 耳を塞ぐではなく回避を優先したことで、 もろに受けて身動きが取れなくなって剣を杖代わりに膝をつくジャンヌ。 だがこれは無差別攻撃である。当然蛇王院もまともに立てなくなってしまう。 (あ、だめだ。滅茶苦茶カロリー使ったかも……) 今こそとどめがさせると思ったが、 想像以上の消耗したことで眩暈を起こす。 元々ヘヴィプレッシャーは多大なカロリーを使う帝具。 元の使用者のコスミナは何人もの男を続けて相手できるだけの性欲旺盛で、 明石もまた艦娘であり工廠を担う為、体力については相応の自信がある。 ただ、それでも短時間で連発することができる余裕については余りなかった。 これ以上の攻撃はできず、タイミングの都合彼が握っていた薄緑は段丘の下へ落ちた。 近くに短時間で回収できるルートはなく、蛇王院も同時に動けなくなっている。 明石の残っている支給品に武器はなし。彼の方は未確認だがあれば使ってる筈。 艦娘であり連合艦隊旗艦を務めることの多い工作艦だからこの手の危機的状況の中、 思考を巡らせてそこから下す判断は凄まじく早かった。 「お、おいおいどうすんだ!?」 艦娘だけあって筋力は常人とはかけ離れており、 大の大人を軽々と肩に担ぎながら全力で走り出す。 「逃げます!」 全力疾走でジャンヌから逃げる。 此処で確実な勝利が望めない、 或いは賭けに出るには相手が悪すぎる。 武器を捨てることになるのは勿体ないが、 元々なくても蛇王院は十分に戦えるし明石としても無用の長物。 捨てることにさして後ろ髪を引かれることはない。 「莫迦! この程度の速度で逃げれるわけが……」 確かにナスティボイスのせいで身体は動けないが、 長時間動けなくなる、と言うわけではないだろう。 明石の走る速度は消耗してる人の割には十分早いが、 このまま彼女が復帰して追いつかれないという保障はない。 「逃げれますよ! だって───」 暫く逃げ続けて先に待っていたもの。 それは───広大な紺の世界。そう、湖だ。 船が遠くない場所に設置されている場所であり、 当然ながら艦娘にとっての一番のホームフィールドである水上。 (武装の偽装は持ってかれたけど。 水上の移動はできるのは確認済み。だからこのまま……) 目論見は水上へ逃げることだ。 流石に長時間の水上移動は一方的に有利になるので、 恐らくできないとは思われるが逃げる分なら問題ないはず。 幸い遠くない場所に孤島もあり、移動時間は足りると予測していた。 「! 明石! ジャンプか飛び込め!」 あと少し走れば水上を前に、 蛇王院の警告が何を意味するかは察し、 ビーチフラッグのラストスパートのように前方へ飛び込む。 その刹那、彼女のふくらはぎへと刻まれた二つの傷。 あのままでいたら両足切断は余裕だっただろう一撃を、 辛うじてしのぐことができた。 「グッ、足を切断するはずが……」 ジャンヌが強引に体を動かしながら追跡していたのだ。 とは言え完全な本調子ではなく、まだ視界も余り定まっていない。 「俺がだんだん動けるようになったから、 恐らくとは思ってたがそうはいかねえか……おい、動けるか?」 「航行には問題はないです。走るのはちょっと無理かも……すみません。」 あと少しで逃げ切れたのに。 蛇王院が担いでは着地が難しいし、 着地した瞬間斬撃で魚の餌行きは確実。 だから時間を稼がなければならないが、当然ない。 「いや、上出来だろ。だったらプランドロールの船長命令だ、テメエだけでも生き残れ!」 つまり見捨てろと言うこと。 薄緑があっても有利でなかったのに、 此処で一対一になればまず勝ち目がない。 分かっている。だが此処からの判断も早かった。 「……分かりました。工作艦明石、撤退します!!」 連合艦隊で大破した艦娘を帰投させることはざらだ。 でなければその艦娘は轟沈すらありうる可能性も出てくる。 だから即座に逃げを徹する。痛みに耐えながらありったけ走り出す。 逃がす隙を与えたくはなかったものの、蛇王院が近距離で砲撃を放つ。 距離が近すぎて巻き添えになる攻撃をするとは思わなかったのもあって回避を選んでしまう。 その間に明石は強引に水上へと飛び込み、水上へと立って移動を始めていた。 狙おうとすればすかさず妨害されるし向こうも警戒するはず。 今すぐ撃墜については最早不可能だと。 「今度は逃がせたらしいな。」 思い返すのはスカルサーペントとの戦い。 その時の彼の周りには無数の同胞の亡骸に加え、 彼の愛した女たちも横たわっていた状態となっていた。 「今度は? 何を言ってやがる。 テメエをぶっ飛ばしてそのまま逃げ切ってやるさ! そして俺達は殺し合いを脱する。テメエと違って、日本人を含めてな!!」 負けるから彼女を逃がした? そんなわけがない。そんな後ろ向きな考えをするか。 彼は常に前を進む。そのまっすぐさはあの斬真狼牙と同じだ。 死ぬための戦いなど一切しない。あるのは勝って生き残る、 航海する船の如く。常に前へと進み続けるだけ。 「なら、潔く去れ。二度と蘇らぬように。」 地面へと剣を振り降ろし斬撃が飛ぶ。 本来のジャンヌが用いた身の丈以上の斬撃は、 風の主霊石により威力や精度が増した状態となる。 既に明石は射線からいないので避けるには問題ないのが救いか。 回避と共に砲撃をぶちかまし、 ジャンプする形で回避と共に頭部を叩き割らんとする一撃。 横へ転がりながら回避し、土埃で阻まった中で触手を動かす。 視界を狭めようとも許されることはなく容易く斬り払われ、 そのついでと言わんばかりに今度は横向きに斬撃が飛ぶ。 先のジャンヌ同様にジャンプして回避し、後方の岩壁がバターのようにスライスされる。 (分かっていたがやっぱ強ぇ。だがまずいな……止血しねえと身が持たねえ。) 余り変わらない人間離れな動きをしてるように見えるが、かなり無理をしている状態だ。 これ以上過剰な動きをして血液の流れを、基出血し続ければ命の危機すらありうる。 やばいと思いながらも残りの一手ではどうにもならないと思っていると、 ジャンヌの動きが止まる───否。止められたというべきだろうか。 「……泡?」 彼女の周囲を覆っている多数の泡。 その為先程から斬撃が防いで彼に到達することはなかった。 一体何事かと思えば、 「どっちも初対面だから判断はつかねえが、 そっちの女が俺にとっての敵ってことでいいんだな!」 そこに駆けつけたのは、孤高なる鮫───神代凌牙だった。 (喧嘩を売ってるメンバーだなこりゃ。) 遊馬にカイトにベクター。 綺麗に関係のあるメンバーが揃っているこの状況。 カイトについてはさして問題はないだろうと言えるが、 あのお人好しだから不安になる遊馬に、明らかに不安なベクター。 この見事にツッコミどころある知り合いに頭を悩ませる。 どちらにせよ最初の懸念通り遊馬を優先として動いていたが、 支給品はデュエルディスクだけにされたことで早速出鼻をくじかれた。 バイクでもあればと思ったが、そう都合よくはいかないらしい。 移動手段の為エアロ・シャークを出そうかとも考えていたが、 スカイダイビングデュエルの経験はあるので対処はそう難しいものでもないとしても、 何処から攻撃が飛んでくるか分かったもんじゃないのに、安易な空の移動は危険だ。 (スカイダイビングデュエルとはなんぞやと言うことに突っ込んではいけない。実際にあった) なので一度自分のホームフィールドにしやすいであろう水辺を目指してみれば、 二人が戦っているところに出くわすことになった。 「こっちは人探しで暇してねえから速攻で行くぜ! 俺は魔法カード『スプリット・ディフェンダー』発動! とりあえずそこのアンタを、聞こえは悪いが奪わせてもらうぜ!」 スプリット・ディフェンダーは相手の場にモンスターが二体以上存在し、 自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、守備力が高い方のコントロールを得る。 味方と認識してはいるが100%ではないので、蛇王院もこのカードの対象にすることはできた。 守備力の定義については、蛇王院のスティグマのお陰で微量ながら上回っているから成立する。 これにより距離の開いていた彼を強引に自身の近くへ引き寄せる、デュエルではできない手段を用いていく。 デュエルの経験と、デュエルを武器として戦った経験からくるカード効果の判断能力は、とてつもなく高い。 (永続罠『バブル・ブリンガー』でレベル4以上のモンスターは直接攻撃できない。 だがどこまでこのデュエルで発揮されるか分からねえ以上、対策はしっかりしておくべきだ。) あのデモンストレーションからデュエルに関して、 何かしら思い入れや思惑があるのだろうがいくらデュエルでも、 相手が自身を瞬殺できるだけのスピードを持ち合わせていては別だ。 先の二人の戦いを見ていたのもあり、あらかじめカードをセットしたのが功を奏した。 できればモンスターを揃えたかったが、その前に蛇王院が死にかねないのもあって乱入を選んだが。 「俺はモンスターを裏側守備表示でセット───」 その予想は的中していた。 モンスターをセットした瞬間に即座に切り伏せられてしまう。 バブル・ブリンガーはあくまで『プレイヤーに対する直接攻撃ができない』だけで、 モンスターに対しての攻撃は可能であるため、攻撃をする気であった以上必然だ。 「早いが、織り込み済みだ! 『シャクトパス』がバトルで破壊されたことで効果発動! 破壊したてめえ自身に装備し、攻撃力は0になってもらうぜ!」 タコの頭部に当たる部分がサメと化した蛸が、 彼女に抱き着くように動きを鈍らせる。 「グッ、貴様……!」 剣を振るいながら振り払おうとするが、 思うように攻撃ができず攻めあぐねる。 「おい坊主! 今は撤退を優先しろ!」 「何言ってる。今あいつは攻撃力がゼロ、 だったら今こそ攻めるべき時に決まって───」 「さっきの泡、テメエのだろ! ねえことに気づけ!」 先ほどから彼女が振るう剣で砂埃がまき散らされており、 視界が悪くなっていてあまり見えていなかったが彼の言う通り、 バブル・ブリンガーがいつの間にかなくなっており、 自身が置いていたはずの魔法・罠ゾーンからも消えている。 「な、風圧で見えなかったがやられたのか!?」 デュエルが現実とある程度リンクするのがこの舞台の基本ルール。 だったら、参加者の行動が逆にデュエルに影響を与えることも無きにしも非ず。 ジャンヌが装備している風の主霊石は文字通りの『風』属性を有している。 風と言うのはデュエルモンスターズに於いてはハーピィなどを筆頭とした風属性もだが、 ハーピィの羽根箒、サイクロンと言った魔法・罠を破壊することに長けたカードも風に纏わるものが多い。 バブル・ブリンガーがないのも、恐らく彼女の攻撃行動がサイクロンか何かのように作用した。 と言う風に解釈することも十分に可能だ。 「アイツもいつまでとりついてるか分からねえ! デュエルってのには俺は疎いが、アイツを甘く見てると命はねえぞ!」 甘く見ていたたわけではないが、 シャクトパスと言えば最初にカイトとの交戦でも使った記憶がある。 あの時もフォトンモンスターにより容易に回避されてしまった記憶があり、 後のことを考えると余計に嫌な思いでしか残っていなかった。 「チッ、仕方ねえ! だったらこうするしかねえな! 魔法カードを発動したターン、『ビッグ・ジョーズ』を手札から特殊召喚する!」 手札で今すぐエクシーズ召喚できるとは言えない手札。 攻めが彼の言う通り難しいのであれば、逃げを優先するしかない。 彼にとっては馴染みのある、正統派な鮫を召喚する。 「逃げを優先するんだろ、乗りな!」 「おう!」 ビッグ・ジョーズの背へとジャンプしながら凌牙が手を伸ばす。 敵ではないと思しき相手であることも分かり即座に飛び移り、その背の鰭を掴む。 掴むと同時にビッグ・ジョーズは水上へと飛び出してそのまま水上を移動して離れる。 「ッ……おのれぇ!!」 そして彼の推察通りと言うべきか、 彼女に纏わりついていたシャクトパスは剣の一振りで破壊される。 考えてみれば当然だ。普通の人間が何の手段もなしに魔法・罠を一方的に受けたりでは、 支給品を没収されたということを差し引いたとしても、余りにも破格の代物になってしまう。 既に水上に逃げたと言えども相手はあのジャンヌ。斬撃を飛ばして撃沈させることは難しくはない。 「んなもん分かってんだよぉ!!」 なので既に対策済みだった。 シャクトパスに気を取られていた隙を見て蛇王院が砲撃を放つ。 ジャンプをされたことで攻撃は成立しなかったが、その頃には既に距離が開きすぎている。 追撃は不可能と判断して、その場を離れることを選ぶしかなかった。 「奇襲には警戒していたが、ああいったものもあるのだな。」 あれがデュエルというものか。 先行1キルだなんだのをいきなり見せられたところで、 デュエルモンスターズに詳しくな彼女には理解できないが、 今の光景を見れば没収をされたことについても納得がいく。 使用者の理解が深ければ矛にも盾にも足りうる力。 今後あれを警戒することは、十分に値する代物だと。 「アプリはある。調べておくのもいいかもしれないな。」 踵を返し、荒れたエリアを去るジャンヌ。 イリヤとの戦いで油断を捨て、凌牙との戦いでデュエルを学んだ。 聖女の聖戦に対する行動力は、今後はより苛烈なものになるだろう。 【一日目/深夜/C-4】 【ジャンヌ@大番長 -Big Bang Age-】 [状態]:ダメージ(中)、疲労(中)、魔力消費(中)(魔力回復中) [装備]:約束された勝利の剣@Fate/Grand Order賢者の石@仮面ライダーウィザード、風の主霊石@テイルズオブアライズ [道具]:基本支給品一式 [思考・状況]基本方針:檀黎斗と言う日本人を浄化しハ・デスを名乗る悪魔を打ち取る。 1:穢れた日本人は浄化する。主催も当然だ。 2:同胞(自分たちと同じ外国人)は率先して保護の方針。 3:先の金髪の女、何者だ……? 4:あの男(蛇王院)、何故生きていたのか。もう一度殺すだけだが。 5:デュエルか。使うのはともかく理解しておく必要はあるやもしれぬ。 [備考] ※参戦時期は久那妓ルート、スカルサーペント壊滅後。 ※風の主霊石で風属性の力を獲得しています。 風の攻撃は消耗も賢者の石で賄ってるので見た目よりは消耗しません。 またこの攻撃はデュエルモンスターズを相手すれのであれば、 魔法・罠を破壊することも難しくはありません。 「デュエルは分かっていたが、勝手がわからず逃げになっちまったか……」 デュエルの関係なしに戦闘はあると予想しても、 デュエルの関係なしに相手が魔法・罠を破壊してくるとは思わなかった。 今後あのような物理的に殴りかかってくる相手と戦う際は、考えて立ち回る必要があるかもしれない。 ブラック・レイ・ランサーの効果無効がそれらを防ぐ可能性もある。試す価値は十分にあるだろう。 「ま、お陰で俺は死ぬことはなかったと思えば御の字だ……礼を言うぜ。」 「何言ってんだ。まだ助かったとは限らねえだろうが。」 汗は掻いてるし、多少息切れも起こしている。 決して浅い傷と呼ぶには無理のある状態なのだろう。 危機を脱したと言っても、彼の怪我の問題はまだ残っていた。 早急に手当てをしなければ、六時間経たず死ぬ可能性もある。 (俺のデッキを渡したとしてもダークナイトじゃ、あまりにも手間がかかりすぎる。) 彼のデッキの回復手段の筆頭と言えば、 バリアン七皇としてのエースモンスターのダークナイトがある。 だがデュエルを理解してないと思しき彼に渡しても手間がかかりすぎてしまう。 特にこのカードを出すのに最適なカードを、任意のタイミングで引ける彼ではないのだから、 試そうにも博打要素はより強くなる。 「そっちの支給品に何かあるか?」 「いや、ねえな。病院とか集落がどっかにあれば応急処置もできるが、都合よくはねえさ。 とりあえず他の参加者に当たる方が生存率は上がりそうだから、その方向で頼む。」 病院がこの舞台にはあったりするものの、 此処よりはるか東の話。あると知ったところで遠すぎる話だ。 「俺は人探しをしたいんだが……まあ、 乗り掛かった舟だ。見捨てるのも目覚めが悪ぃし治療優先だ。」 「海賊を乗せて乗り掛かった舟か。粋なことを言ってくれるじゃねえか。礼を言うぜ。」 海に纏わる者達は鮫に乗って進んでいく。 ───彼の探していた人物二名から、余計に離れるように。 【一日目/深夜/C-4 水上】 【蛇王院空也@大番長 -Big Bang Age-】 [状態]:胸に真一文字の傷(割と重傷、)、疲労(大) [装備]:ティアドロップ@Caligula2、 [道具]:基本支給品、ランダム支給品×0~1(薄緑ほど使えないかつ回復系ではない) [思考・状況]基本方針:普段どれだけキレても殺しはしないが、てめらは別だ。 1:うちの傘下や同じ考えの奴がいるならなるべく優先する。 2:九時間後に指定されたエリアの一つに向かい、再度作戦会議。 3:明石、いい女なんだが残念だな。 4:ジャンヌとは必ず決着をつけてやる。 5:今はこいつ(神代凌牙)と一緒に動く。明石が無事だといいんだがな。 [備考] ※参戦時期は扇奈ルート、狼牙に敗北後。 ※異形の腕はそのままです。そのためゲーム上の攻撃で使ってる砲撃も可能です。 細い触手を切られてもダメージはありません。 ※遊星、明石と情報交換しました。 【神代凌牙@遊☆戯☆王ZEXAL】 [状態]:健康、ビッグ・ジョーズ召喚中 [装備]:デュエルディスクとデッキ(神代凌牙)@遊☆戯☆王ZEXAL [道具]:基本支給品 [思考・状況]基本方針:遊馬の導いた希望の未来のために主催者を倒す 1:遊馬を探す 2:カイトは協力を頼んでおく。ベクターは……会ってから判断。 3:魔法を破壊出来る上にあの攻撃力……あの女(ジャンヌ)厄介だな。 4:こいつ(蛇王院)の怪我を何とかしないとやばい。 [備考] ※参戦時期は最終回後。 (C-4からは抜けたのかな。) 明石は川の勢いに乗りつつ、C-4から離れる。 西へ移動して流れに乗りつつ、別のエリアで地上へと戻る算段だ。 彼女ならばジャンプ一つで川ぐらいは飛び越えられることは分かる。 だからD-3に来たからと言って、油断せずに移動を続けておく。 蛇王院については、生きてるとは願いたいが余り前向きにはなれない。 生身で海上の戦艦に匹敵するような出鱈目な力を発揮してきた相手に、 戦闘力が貧弱極まりない工作艦で、前向きに考えろと言う方が普通に無理な話だ。 戦場では轟沈も決しておかしな話ではないし、そういう意味でも後ろ向きではある。 (生きてるか死んでるかを問わず、自分にできることをしないと!) 戦闘ではなく修理や工廠での武器の改修に運営の店番と、 他の艦娘ではできない役割を持っているのもまた工作艦の特徴。 適材適所。意地汚く生き残るのが役目であるならば、全力で挑め。 戦場に出ることは少ない明石もまた、自分の役割に準ずる。 【一日目/深夜/D-3 水上】 【明石@艦隊これくしょん】 [状態]:ケッコンカッコカリによる強化(耐久や幸運以外意味なし)、両足に傷(走るのに苦労する程度に負傷)、疲労(大) [装備]:指輪@艦隊これくしょん、大地鳴動『ヘヴィプレッシャー』@アカメが斬る! [道具]:基本支給品、ランダム支給品×0~1 [思考・状況]基本方針:ハ・デスを倒して生きて提督の下(元の世界の方)へ帰る。 1:蛇王院さん……無事だといいんですが。 2:九時間ほど散策して、指定の場所に遊星さんと合流。 3:帝具、ちょっと調べたくなってしまいますねー。 4:首輪を解除できるだけの装備を整えないと。 5:特体生って艦娘余裕で超えてるじゃないですかやだー! 6:このまま水上移動して、どこへ向かおう。 7:ジャンヌには最大限警戒。あれがゴロゴロいたら艦娘ですらかませなりますよ! [備考] ※改装後、ケッコンカッコカリ済み、所謂ジュウコンなし、轟沈経験ありの鎮守府の明石です。 ※艤装はありませんが、水上スキーそのものは可能です。 時間制限については特に設けてませんが長時間は無理かなと。 ※指輪は没収されていませんが、偽装がないため耐久以外ほぼ意味がありません。 ※蛇王院、遊星と情報交換しました。 ※C-4の段丘に薄緑@刀使ノ巫女が落ちてます。 C-4の段丘の地形がかなり荒れてます。 C-4か近くのエリアに隠れ港+護送船@テイルズオブアライズがあります 【ティアドロップ@Caligula2】 蛇王院空也に支給。作中のショップで購入可能なスティグマ(装備品)。 装備品とは言うが見た目に変化はなく、魂の残滓(宝箱)を開けた(本ロワの場合触れた)人物に装備される。 装備されると残滓が消滅し、装備されると基本的に外せない。事故防止のため簡素なケースに収納されてる。 (厳密にはどう外すか分からない為。参加者である風祭小鳩であればわかるかもしれない) この装備は防衛本能に分類し、防御と回避に大きな補正が入る(回避はゲーム上の防衛本能最高値)。 装備した人物が死亡した場合、再び魂の残滓となって再利用が可能。 その際魂の残滓は装備した人物の遺体のそばに発生する形で外れる。 魂の残滓の形状は黄と黒が混ざった塊のようなのもの(Caligula2における宝箱のビジュアル)。 【薄緑@刀使ノ巫女】 蛇王院空也に支給。作中における獅童真希の手にする御刀。膝丸ともよばれる。 珠鋼という特殊な金属で出来た日本刀で折れず錆びない。 ※刀使ノ巫女世界での話なので何かしらで折れるかも 原作でも加州清光が元の名前の逸話通りに折れてる 蛇王院は刀使ではないので刀使の能力は使えない為、 物凄く頑丈な武器と言った扱い。サイズは史実通り80cmの太刀。 【風の主霊石@テイルズオブアライズ】 ジャンヌに支給。マスターコアについては水の主霊石参照。 原作に於いては領将アウメドラが用いており、風属性の力が行使可能。 ゲーム上ではアウメドラの戦闘以外での使用の描写がないので、使うとどうなるかは書き手任せ。 テイルズでは雷が風属性になることもあるが、これで使えるのは基本的に風に関するものだけ。 022:You say…絆 ―死者と生者、零にて交わりし時― 投下順 024 未来への第一歩 時系列順 37 命の灯火 ジャンヌ 053 Battle Royal Mode-Joining 超戦士カオスソルジャー 39 プランドロール・シップヤード 蛇王院空也 明石 08 希望の未来を途切れさせるかよ 神代凌牙
https://w.atwiki.jp/ohshio/pages/2889.html
交流試合 日時 2016/02/28(日) 学年 2年 会場 明石市立朝霧小学校 詳細 ご案内 ※駐車場についての注意事項をよくお読み下さい
https://w.atwiki.jp/negiparo2/pages/308.html
裕奈×ネギ小説 第2話 「・・・・・これで良しっと。」 ネギが倒れた後、裕奈はユニフォーム姿のままネギを抱きかかえ、寮の守衛さんにお願いをして医務室を使わせてもらったのだ。 守衛さんは「おそらくただの過労だろう」と医務室のベッドにネギを寝かせると、裕奈に看病を任せて見回りに出かけた。 「守衛さんは見回りが終わったらそのまま守衛室に帰るって言ってたし、しばらくこの部屋使っていいかな?それにしてもネギ君、疲れていたなら無理しなくて言えば良かったのに・・・・・・」 ベッドに寝ているネギを見ながらそう呟くと、改めて自分がユニフォーム姿のままだった事に気づいた。 「ネギ君はまだ起きそうにないし、着替えてこようかな?」 そう言ってネギのそばを離れようとした瞬間 「ん・・・・・」 ネギの起きたようにも取れる声が聞こえ、ネギの顔を見ると眼は閉じられたままだった。どうやらただの寝言のようだ。 「寝言か・・・。それにしてもネギ君ってやっぱりカワイイな。」 ネギの寝顔をまじまじと見ながら呟くと、自分の胸が鼓動が高鳴っているのに気づいた。 ―――まただ・・・・・。いつからネギ君の事を見たり、考えたりするとこんな気持ちになっちゃったんだっけ? 初めはただのカワイイ子供先生としか思ってなかったのに・・・・。 あの時からかな?ネギ君を賭けて高校生とドッジボールで対決したときに、アスナがやられて、私を含めてみんな戦意喪失していたのをネギ君は諦めずにみんなを励ましてくれた時・・・・・? ねえ、ネギ君。キミが頼りがいがある部分を見せちゃったから、ネギ君のこと好きになっちゃったんだよ。 夜の特別練習だって、1日のうち1秒でも長く一緒にいたかったから自分から申し出たんだし、わざわざユニフォーム着たのも私の違う部分を見て欲しかったからなんだ。なのにどうしてキミとの距離は縮まらないの・・・・・? 悲しい顔をしながら裕奈が自分自身に問いかけた時、ネギの口からその答えとなる言葉が寝言として返ってきた。 「アスナさん・・・・・・」 その言葉を聞いた途端、裕奈は自分の胸に激しい圧迫感が襲ってきたのを感じた。 「胸が、胸が苦しいよ・・・・・・」 裕奈は前にもこんな気持ちに襲われた事があったのを思い出した。 あれは小学6年生の時、友達と街で遊んでいたら裕奈の父親が若い女性と楽しそうにおしゃべりしているのを偶然見たときの気持ちに似ていた。 結局あの女性は裕奈の父親の昔の教え子で、街で偶然再会して昔話などに花を咲かせていただけだったのだが。 ともかく確かだったのは、自分は友人であるアスナに嫉妬をしているということだった。 「ん・・・、アスナさん・・・・」 ―――やめて、聞きたくない! 裕奈はそう思うと同時に、ネギの口から紡ぎだされるように出てくる言葉を塞ぐかのように、自分の唇をネギの唇に重ねていた。 最初は自分が思わずした行動に驚いて唇を離したが、すぐに落ち着くとまたキスを再開した。 「んっ・・・・・」 ネギの口から息苦しそうな声が聞こえたが、今の裕奈の耳にはまったく届いていなかった。 ネギの唇を味わうかのように長い間口づけをした後、裕奈は閉じられたネギの唇を自分の舌でこじ開けて、歯列を右から左、左から右に舐め回した。 そして一瞬、歯の間から舌が出てきたのを見逃さず、すぐにその舌に自分の舌を絡ませた。 ―――やっぱり子供の舌って小さいな。それにちょっと甘い・・・・・・。 そう思いながら舌だけでなく、小さな口腔を掻き回していると、息苦しさを感じたのか、ネギの瞳がゆっくりと開かれていた。裕奈はそれに気づいたが、大して気にもせずに深い濃厚なキスを続けた。 「ぷはっ!明石さん、何をやってるんです・・・・・んんっ!」 眼がさめた途端、口の中の生暖かさと、瞳にアップで映し出された裕奈の顔に驚いて上半身を起き上げたが、裕奈の手によって再びベッドに押し戻され、唇を塞がれた。 「んんっ!んっ・・・・・・・」 ネギは抵抗をしながらも、舌や上から押し付けられた体から感じる裕奈の温もりにだんだんと自分の意識が飛んでいきそうになっていた。そしてやっと唇が開放された頃には、ネギの頬は紅潮し、体も熱くなっていた。 「ぷはっ!明石さん、どうしてこんなこと・・・・・・」 ネギが裕奈に問いかけた瞬間、自分の頬に暖かい液体が落ちてきた。驚いて裕奈の顔を見ると、裕奈の瞳には今にも溢れんばかりの涙が浮かべられていた。 「ネギ君、どうして・・・・・どうしてアスナなの?」 質問の意味が良く分からずに困惑していると、再び頬に大粒の涙が落ちてきた。 「アスナが・・・・、アスナがそんなにいいの?私の方がアスナよりもネギ君にお姉さんの元を離れていても寂しい思いはさせないっていう自信があるのに!」 裕奈は木乃香にどうしてネギはほとんど相手にもされないのにアスナに好意を持っているのかと聞いた事があった。すると木乃香は 「それはな、ネギ君のお姉さんはアスナにそっくりなんやて。そやからネギ君にとって、アスナはお姉さん代わりになっとるんやないの?」 と答えた。 その時は大して気にも留めなかったが、今は違う。裕奈の中で「たられば」の言葉が交錯していた。 「アタシがネギ君のお姉さんに似ていたら・・・・・。アタシがアスナよりも早くネギ君に出会っていれば・・・・・。」 そう考えながら、裕奈はネギの胸で泣き続けた。 「明石さん、泣かないで下さい・・・・・」 そう言いながら、ネギは裕奈の顔を上げてその唇に軽く口づけた。 裕奈が驚いてネギの顔を見るととても優しい目をしていて、今まで自分が抱いていた嫉妬感や哀惜が洗い流されるようだった。 「明石さんがボクの事を好きだって思ってくれてるのはとても嬉しいです。イヤな訳がありません。」 ネギもいくら10歳で恋愛経験もほとんどないとはいえ、さすがに裕奈が自分に抱いている感情に気づかないわけが無かった。 「ボクは確かに明石さんの事はアスナさんの事よりも知りません。でも少しずつだけど3日間で明石さんのいろんなことが分かりました。 だからもっとボクにいろんなことを教えてください 。あなたのことを良く知って、そうしたらボクにとってお姉ちゃんと同じくらい大切な人になるかもしれないですから・・・・・・・・」 裕奈はネギからの優しい言葉に安堵の表情を浮かべて 「ありがとうネギ君、優しいね。・・・・・ねえ、私のわがまま1つだけ聞いてくれる?」 と問いかけた。 ネギは姉から言われた「教師と生徒はあんな事やこんな事しちゃだめ」と「女の子には優しくなさいね」という2つの言葉が頭をよぎった。 でもネギは迷わず後者を選択した。 ―――お姉ちゃん、今日だけはいいよね? ネギはそう心の中で呟きながら三度、裕奈と口づけた。